朝9時に入って、夜7時に出る。その1日で20万円。年末年始の透析バイトでは、こういう求人が普通に出ます。ベトナムに渡る前、日本で透析を専門にしていたアイジュは、この時期の透析バイトを実際によく受けていました。
単価が跳ね上がるのには、はっきりした理由があります。透析という治療が、正月だからといって休めないからです。
透析は、正月も止められない
維持透析は週3回、1回4時間前後が基本です。月水金か火木土の枠で回っていて、祝日でも年末年始でも、この間隔は崩せません。間が空けば、カリウムと水が体に溜まっていきます。患者さんにとっては「連休だから1回飛ばす」という選択肢がそもそもありません。
だから透析クリニックは大晦日も元日も開いています。患者さんの数は変わらない。一方で、働きたい医師は一気に減る。家族と過ごしたい、実家に帰りたい、という事情は医師も同じだからです。
単価が1.5倍から2倍になる仕組み
需要が変わらず、供給だけが細る。値段が上がるのは当然の結果です。年末年始になると、チェーン展開している透析クリニックも、ほかのバイト先も、通常の1.5倍から2倍の単価を出してきます。
アイジュ
ゆー「座ってるだけ」と本人は言いますが、これは状態の安定した患者さんが多い日の話です。10時間の拘束の間に、穿刺がうまくいかない、透析中に血圧が下がる、シャントの流れが悪い、といったことは普通に起きます。何も起きなければ座っている時間が長い。何か起きれば、その場にいる医師が1人で判断する。20万円はその待機と判断への対価です。
腎臓内科医は、年末年始を休んだことがない
高い単価の裏返しとして、透析を専門にする医師は年末年始に休めません。自分の外来の患者さんも、正月に透析を受けに来るからです。
アイジュは2026年の正月、5年ぶりに日本で年越しをしました。話しているうちに、ふと気づいたそうです。腎臓内科医になってから、年末年始に1週間まるまる休んだのはこれが初めてかもしれない、と。
いまの勤務地ベトナムでも事情は同じでした。ベトナムの年末年始の休みは1月1日だけで、2日からは普通に仕事です。本番は2月ごろの旧正月(テト)なので、1月1日の「ハッピーニューイヤー」は日本人のグループが言っているくらい。日本で紅白歌合戦が終わるのは、ハノイではまだ夜10時前です。
受ける前に確認しておきたいこと
年末年始の透析バイトは、単価だけ見れば非常勤で最も効率のいい仕事のひとつです。ただ、普段透析を見ていない医師が受けるなら、額面より先に確かめておきたい点があります。
- 何クールを担当するか、拘束は何時から何時までか
- 透析中の急変やシャントトラブルに、どこまで自分で対応するのか
- 搬送が必要になったとき、受け入れ先の病院は年末年始も動いているか
- 常勤医やスタッフに、当日連絡がつくか
特に3つ目は見落としやすい項目です。ふだんなら数本の電話で決まる搬送先が、正月は決まらないことがあります。1人で抱える時間が長くなるぶん、事前に確認しておく価値があります。時給換算の考え方は非常勤医のバイト・時給のリアルにまとめています。
稼ぐ正月と、休む正月
同じ回で、ゆーは真逆の年末年始を報告しています。医局にいた頃は当直や待機が入り、医局を抜けてからも、割のいいバイトが出るので毎年2、3日は働いていました。今年は初めて、9連休を1日も働かずに過ごしたそうです。
ゆー息子さんは年長で、4月から小学生です。上がる前の最後の冬だから、というのが全部休んだ理由でした。それでも「1日くらいは仕事を入れようか」と、直前まで迷っていたと言います。
日給20万円は、医師にとっても小さくない金額です。ただ、年末年始の単価が高いのは、多くの人がその日を手放したくないからでもあります。高く売れる日は、自分にとっても高い日です。今年の年末、あなたはどちらに使いますか。