30歳で積立を始めて、6年でやめた人。40歳で始めて、70歳まで30年続けた人。70歳の時点で資産が多いのはどちらでしょうか。
答えは、6年でやめた人です。
番組の第20回に招いたのは、タイに住んで16年、海外に住む日本人の資産相談を受けているグローバルサポートグループ代表の久米直也さんです。アイジュさん自身も顧客のひとり。その久米さんが用意してきたスライドの最初の計算が、この問題でした。
入れた額は5分の1。それでも勝つ
条件はシンプルです。毎月5万円を積み立てて、年利10%で運用する。10%は、米国の代表的な500社に投資するS&P500の長期の平均利回りとして久米さんが置いた数字です。
- Aさん:30歳で始めて、36歳で積立を止める。入れた額は360万円。止めた後も運用だけは続ける
- Bさん:10年考えてから40歳で始め、70歳まで積み立てる。入れた額は1800万円
70歳の時点で、Bさんは約1億1400万円。Aさんは約1億4600万円です。年利10%を月割りにして、毎月複利で回した場合の計算です(番組のスライドでは1億1300万円と1億4700万円)。
Bさんは5倍のお金を入れました。Aさんが手にしていたのは、Bさんより10年長い運用期間です。入金額は後から増やせますが、始めた年は後から変えられません。
早く始める人は、早くやめる
AさんとBさんの性格づけには、久米さんの実感が入っています。聞いたらすぐやる人は、続かずに早くやめてしまう。慎重な人は始めるまでに時間がかかる代わりに、始めたら長く続ける。相談を受けてきた人の観察です。
だからこの計算は「6年でやめていい」という話ではありません。30歳で始めて70歳まで40年続けると、同じ条件で約3億1600万円になります。Aさんの早さとBさんの粘りを両方持つと、こうなります。
アイジュ医師は「Bさん」になりやすい
医師のキャリアは、構造的にBさん寄りです。医学部の6年、初期研修の2年、そこから専門研修。収入が安定して、手元に余裕が出てくるのは30歳前後になります。働き始めれば今度は忙しく、相場を見る時間もない。
久米さんが医師について事前に調べてきて意外だったのは、勤務医の実質賃金がほとんど上がっていないことでした。世間では、医師の給料は増え続けていると思われています。実際は物価を差し引くと横ばいで、収入が高いほど税と社会保険料の割合は重くなる。国民負担率は46%前後です。
アイジュ忙しくて、相談相手がいなくて、営業は寄ってくる。そこで慎重になるのは正しい反応です。ただ、検討している10年の間も時計は進みます。何から手をつけるかは医師の資産形成の始め方にまとめています。
置いておくだけで、お金は減っていく
時間が味方になるのは、運用している場合だけです。置いたままのお金にとって、時間は敵になります。
久米さんが挙げた例は身近でした。コンビニのコーヒーは2006年に1杯100円ほどで、いまは平均150円前後。電気代も単価で1.5倍になっています。量は増えていません。1万円は1万円のままで、買えるものが減っています。
日本銀行は物価上昇率2%を目標にしています。これが20年続くと、財布の1000円は673円分の価値になる。銀行に置いた1000万円なら673万円、1億円なら6730万円です。
アイジュアイジュさんは子どもの出産祝いを金貨に換えて、10年ほどで5倍にしています。その話は出産祝いを金貨にしたら5倍になった話に書きました。
10年の遅れは、後から取り戻せない
Bさんが10年の遅れを入金額で埋めようとすると、毎月の積立をかなり増やす必要があります。目的の時期が決まっているなら、そもそも間に合わないこともある。久米さんの言う「時間が大事」は、精神論ではなく計算の話です。
年利10%は過去の平均を置いた仮定で、将来の利回りを約束するものではありません。利回りが下がると、この逆転は起きなくなります。年5%で同じ計算をすると、Aさんは約2300万円、Bさんは約4200万円。今度は入金額の多いBさんが勝ちます。時間が効く度合いは、利回りが高いほど大きくなります。
運用の期間だけは、お金では買えません。あなたの口座は、いま何年目ですか。