「最近の研修医は、何時に帰っちゃうの?」。70歳前後になる父親から、アイジュはよくこう聞かれるそうです。いまの研修医は、夕方5時ごろには帰されることが珍しくありません。
アイジュの答えは「いいんじゃないの」でした。ただし、ひとつだけ引っかかっていることがあります。
研修医が帰される理由
2024年4月から、医師にも時間外労働の上限規制が始まりました。研修医も対象です。病院は研修医一人ひとりの勤務時間を把握し、上限を超えないよう管理しなければなりません。
当直明けの扱いも変わりました。勤務と勤務の間に一定の休息をはさむ、勤務間インターバルの考え方が入ったためです。
ゆー病院側からすると、研修医が残っている時間はそのまま「労働時間」として数えられるリスクがあります。上限を超えれば病院の責任です。だから一律に帰す。管理する側の論理としては筋が通っています。
「残りたいのに帰らされる」のはおかしい
アイジュが引っかかっているのは、帰りたい研修医ではなく、残りたい研修医のほうです。
アイジュ夜の緊急カテーテルは、日中の予定検査とは違います。その場にいなければ見られない症例です。研修医を守るための時間管理が、学びたい研修医から機会を奪っているなら、それは本来の目的からずれています。
自己研鑽と労働の線引き
この問題には、制度上の手がかりがあります。厚生労働省は2019年7月の通知で、医師の研鑽が労働時間に当たるかどうかの考え方を示しました。上司の指示がなく、診療の義務もない状態で自ら学ぶ時間は、労働時間に当たらない場合があります。線引きは病院ごとに明確にしておくよう求められています。
つまり、残って見学する時間を「自己研鑽」として扱う運用を持っている病院もあれば、線引きが面倒で一律に帰している病院もある、ということです。残りたい研修医は、研修担当の先生や事務に自己研鑽として残れる運用があるかを一度聞いてみる価値があります。聞かなければ、答えは「帰れ」のままです。
「お前らの世代は可哀想だ」と、15年前も言われていた
アイジュは研修医になるとき、父親からこう言われたそうです。お前らの世代は可哀想だよな、何をするにもあれはダメ、これはダメと言われて、と。
いま、同じ父親が「最近の研修医は」と言っています。どの世代も、下の世代を見て同じことを言う。
アイジュ帰る時間が早くなっても、医師としての質が下がるわけではない。問題は時間の長さではなく、残された時間を本人がどう使うかです。
研修医の2年間を、どう使うか
番組では、研修医の2年間は何も考えずにがむしゃらにやるのも全然アリだ、という話も出ました。専攻医の数年間も同じです。一方で、若い世代が投資や副業、インターンに目を向ける気持ちも「当たり前だと思う」とアイジュは言います。臨床だけやっていればいい時代ではない、という実感があるからです。
ゆーの考えはもう少し具体的でした。
ゆー夕方5時に帰されるなら、そのあとの時間は自分のものです。症例を追いたい人は、自己研鑽として残れる道を探せばいい。別の可能性を探したい人には、上の世代が持てなかった時間があります。どちらを選ぶにしても、自分から選択肢を消さないこと。それがアイジュの一番の願いでした。帰された夜の時間を、あなたは何に使っていますか。